スタートレックの新しいシリーズ、『ピカード』がはじまりました。79才のサー・パトリック・スチュワートがどんなふうに変わったのか、不安と期待が入り混じっておりました。
※英語版で見ているので、印象が所どころ違うがもしれません。
懐かしのテンフォワード
宇宙を漂うエンタプライズ号の外観を一通り堪能しつつ、その一室であるテンフォワード(船内レストランバー)にフレームインすると、元キャプテンピカードと元コマンダーデータがポーカーを楽しんでいます。
キャビンクルーのポーカーはTNG(スタートレック、ネクストジェネレーション)の恒例行事ですが、キャプテンピカードは、クルーと親密になり過ぎることを自粛していたので、ポーカーに参加するようになったのは最後の最後(第7シリーズの第25話、All Good Things)でしたから、その後、キャプテンピカードの中でもデータとのポーカーが習慣化したことが想像されて、微笑ましいです。
アンドロイドであるコマンダーデータのポーカーフェイスについての読みあい談義が始まります。感情がないとされるアンドロイドは、「何もしなければ読めない」からといって、「何かを装うと必ずその逆の状況が起きている」とも限らず、「ポーカーフェイス」という戦術は、アンドロイドかどうかに関わらず有効なところが、興味深いです。
ふと外を見ると、何故か火星に向かっており、船内が揺れ始め、コマンダーデータのクイーンx5枚というありえない手札が開かれ、「何かがおかしい」っと混乱していたら、夢だった。というのが本シリーズのモノローグでした。
「Q」が5枚…
TNG名物の全知全能の存在「Q」が登場するのかな。わくわく。
目が覚めたら愛犬「No.1」が駆け寄ってきます。「No.1」は、スターフリートのキャプテンがファーストオフィサーを呼ぶときのあだ名で、現役のキャプテンピカードの「No.1」は、コマンダーライカーでしたが、退役後は愛犬をそう呼んでいて、微笑ましいファンサービスです。
21世紀風の24世紀人
シーンは切り替わって、グレーターボストン。ゼヒア男性と人間女性がいちゃいちゃしながら女性の「デイストリーム研究所」への入所を祝っています。※人工知能と量子意識の研究職。ヴォヤジャーの冒頭でも、キャプテンジェーンウェイと婚約者がやり取りをしていましたが、本作はぐっと今風です。スラングなんかも使っていて、過去作のスタートレックのやたら行儀がいい若者たちよりも頽廃的な雰囲気でした。
彼氏のゼヒア人は、スタートレックディスカバリー(DSC)で登場したポー女王が治める星出身のハズですが、つい昨年のポー女王は特徴的な「訛り」で話していたのに、今年のゼヒア人は普通のアメリカのイケてるワカモノ風の話し方でした。スタートレック内ではDSCからピカードまで100年以上の時間が経過しているので、地球に来訪したゼヒア人2世って感じの設定なのかな?
ところでこのゼヒア人、瞬殺されます。
飲み物を準備している間に何者かが侵入し、あっという間に命を落とします。最近のスタートレックでは、こういうサクッとスタイリッシュに命を落とす頻度が高くて時代の流れを感じます…
兎も角も、女性の方は、頭に装置をつけられ、何かをチェックされた後、侵入者から「残りは何処にいる?、どこから来た??」などと聞かれますが、知らない模様。
頭に黒い目隠しをされると、何やらスイッチが入って、猛烈に強くなり、侵入者は「覚醒し始めたぞ」っとあわてた様子を見せますが、あっという間にせん滅してしまいます。
倒れた彼氏に駆け寄り死を悼もうとしたその瞬間、ビビット来て、キャプテンピカードの顔が脳裏をよぎります。
今作も「万能女子」(Mary Sue)でしょうか?、DSCのマイケルバーナムも万能女子っぷりが凄まじく、かなり嫌われていたのに、またかよ…って感じです。
但し、ぱっと見、バーナムと違い性格は悪くなさそうなので、悲観するにはまだ早い?
実家でまったりするキャプテンピカード
場面は再び、キャプテンピカードの隠居地、フランスの実家に戻ります。愛犬にフランス語で話しかけてみたり、「アールグレイ、ホット」が「デカフェ」にほんのり変わっていたり、ちょいちょい過去作のファンサービスをはさんで来て、好感。
2人のロミュラン人のお世話係と暮らしているっぽいのですが、二人とも普通の最近風(21世紀)の服を着ているので、最初はロミュラン人だとわからなくて、バルカン人だと思っていました。話し方もこれまでの異星人のような堅苦しい話し方ではなく、普通のおじさんとおばちゃんの話し方でした。
ユニバーサルトランスレーターという翻訳機を通して話しているのではなく、直接話しているのかな?、いや、ユニバーサルトランスレーターが高性能化して、訛りのニュアンスまで再現できるようになったのかも?
特にロミュランおばちゃんの方は「Codger」という言葉がわからないという異星人風をてらいながら、話し方はその辺の田舎のおばちゃん風で爆笑しました。
この辺までは、懐古厨であるワタクシも過去作との違いをエンジョイしていたのですが、次のインタビューのシーンでかなり落胆しました。
ディストピアなスタートレック?
そもそもスタートレックで「報道」を見たのは、『エンタプライズ』で地球が攻撃された時の映像ぐらいしか印象にありません。へぇ、この時代にも「報道」とか「ニュース」とか残っているのね~、ぐらいに思っていたのですが、インタビューアーが24世紀的ではないんですね。
キャプテンピカードの話を遮ぎって、手厳しいコメントを入れてきたり、事前に触れられたくない話題について念押ししていたのにガンガン聞いたり、そんなズルいことや、だまし討ちみたいなことをしないのがスタートレックの24世紀だったのに…
更に言えば、このレポーターの女性が人種差別気味で、かなりショックを受けました。
スタートレックって、現代の想像力を駆使して、未来の人間社会の「理想像」を詰め込んだところに魅力があったのですが、最低最悪の人間像が映し出されていました。
開始10分で心折れた。
惑星連合の旧来の敵であるロミュラン人を助けるよりもマシなリソースの使い方があると考える人が多い時代らしいです。
ロミュランが研究していたアンドロイドが火星を襲ったのか、それ以降アンチロミュラン、人工知能完全禁止になってしまった模様。
スタートレックには戦争が多くて、曲者ばかり。バルカン、クリンゴン、フェリンギ、カーダシアンなどの他の曲者と比べ、ロミュラン人が特別に敵視されているのか、ヒューマン至上主義が始まっているのか、気になりますが、ヒューマニズムの劣化が激しすぎて、みてられない。
それ以降も、この女性の口から出てくる言葉と、その表情のいやらしさにガッカリ。
一回止めて、見るのをやめました。あと30分も残っているのか…。つらい。
そして、ショックで、そのまま数日放置していました。
ダージの正体
続きは、その放送を見た覚醒中の女性が、ピカード宅を訪ね、号泣しながら助けを求め、キャプテンピカードはすんなり受け入れ、泊めてあげることにしたが、翌朝いなくなってしまいます。
お茶飲みながら何の変哲もないネックレスを「これは珍しいですね」っと褒めていたので多分ストーリーのキーアイテムですね。24世紀的には「この時代に装飾品を身につけているなんて珍しいですね。」ならわかるけれどな~。
この後、キャプテンピカードは再度コマンダーデータの夢を見て、自身の貸倉庫へ行き、自宅の絵と対になっているデータから送られた絵を確認したら、いなくなってしまった女性(ダージ)と同じ顔でした。そしてその絵画の題は「娘」だったという。ダージはデータの「娘」であることを示唆しています。
このシーンも「キャプテンピカードデー」の垂れ幕など思い出のしなが沢山飾っていてファンサービス満載でした。ただ、データに貰った絵の名前や顔など全然覚えていなくて酷いカモ…
主人公、瞬殺される
ダージの方は、迷惑をかけないようにとピカード邸を後にしたものの、お母さんに電話したらピカードは必ず助けてくれるから、ピカードのところに行くようにと激プッシュされ、更に覚醒度を深めます。
ピカードと再開した後、ダージは自分がアンドロイドであることを聞き、二人でデイストリーム研究所へ行くことになります。切り替え、はやっ。
そうしたら、また、追手が表れてアッサリ死んでしまいます。ピカードが助けてくれるって、全然ダメだったよ。またもや瞬殺だったよ。
言葉がないよ。
お母さんの映像がひずんでいたので、ピカードのところにおびき出されたんじゃないの??なんて疑ってしまったほどにアッサリ死んでしまいました。
ところでこの時、ピカードも爆風で吹っ飛ばされて、気を失い、自宅のソファーで目を覚まします。ひどいぶっ飛ばされ方をして、多分アメリカからフランスへ運んだのに、ソファーに寝かせることはないじゃんね。そこは、ベッドに、お願いします。
ダージは映像には写っていなかったとのこと。ピカードには見えていたし、敵とも戦えていたので、カメラだけから見えなくするクローキング技術をつかったのではないかとの事。スゲー。
データの娘
この後、ピカードは沖縄のデイストリーム研究所へ行って、Dr.アグネス・ジュラーティーから、かつてブルース・マドックス博士がデータのサイバー神経細胞から意識のあるアンドロイド(今はシンセティックと呼ぶみたい)を作る研究していて、ペア(双子、ツイン)であることが分かったところで、ボーグキューブで医療活動をしている双子の片割れソージの画面につながります。
データは女の子を欲しがっていたからブルース・マドックス博士はデータの絵を元に双子をデザインしたんだろうねっと推測するピカード。データはTNGのシーズン3、16話『The Offspring』で我が子を製造したのですが、Lalは直ぐに死んでしまいます。
Lalは元々、男性でも女性でもなかったのですが、数千の人種サンプルの中から本人が選択したのが「人間女性」でした。この時データは子育てに悩んでバレリーに相談したりしていましたっけ。
ダージの双子の片割れのソージも研究者らしく、ボーグキューブなのにロミュラン施設??で、これまたバルカン人みたいなロミュラン人と出会い、いい感じになっていました。
最後に
レポーターのシーンからも、スタートレックの世界観が壊されつつあり、とても不安。スタートレックが始まった頃は、SF自体が前衛的だったのかもしれませんが、現在、SF作品が溢れかえっている中で、『スタートレック』の唯一の特徴と言えるかもしれない「ユートピア」的世界観を崩してしまったら、他のSFと何ら変わりなくなってしまいそう。
ショートトレックの『Calypso』の別視点からのフェデレーション下ろしは興味深いものがありましたが、キャプテンピカードがフェデレーションの敵になるというのはどうかな…
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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