とうとう最終話になったお年寄りピカードさんシリーズ1。いい感じの仕上がりになっていました。
最初からネタバレで突っ走っていますので、ご注意くださいませ。
墜落したボーグキューブが観光地みたい
美しい。
墜落したボーグキューブが湖と丘陵地と月とマッチして、とても美しい景観を作っていました。これは、観光地として人気スポットになりそう。
そこに逃がしてもらったロミュランスパイのナレクが忍び込みます。
地面に座って話をしているエルノアとセブンはナレクに気づいていません。それにしても、エルノアよ、なんてこと言うんだ…っという本エピソード最初の発言が、
「xB達って、死んでいた方がいいのかな?、みんな彼らのことを嫌っているし、彼らには家もないし、どこにも属していないよね…」
って、どうなのよ。
エルノアは「Absolute Candor」(絶対的な率直さ)が宗旨の忍者組織で育てられたので、思ったことをそのまま口にするキャラなんですが、この人、17歳ぐらいの設定のハズなので、もうちょっと「配慮」があってもいい気がするんですよね…
それに対し、セブンは「私は死んだ方がいい?、私には家がないし、どこにも属していないし、フェイザーを頭に向けて、終わらせた方がいいかしら…?」っと返しています。
「Because I miss you」(私はあなたがいないと寂しい)と答えるエルノア。
どういう会話なんだこれ?
慎重に行動するも、姉に見つかってしまうナレク。あれ?、この前、ビームアウトしていなかったっけ?、まだいたんだナレク姉。叔母のラムダもいるのかな?
今回は気持ち悪くなく抱き合って、そしてパッと離れる姉弟。ツンデレキャラだったのか?、距離感がよくわからない姉弟ですな。
「オーシャンフロントで、波が寄せて、気に入るわよ。」っと、隠れ家に案内する姉。流石ジャッド・バッシュ、トラブルに強いですね。
窓をするぬける謎の蝶と捉えられたピカード
「ピカード」のいいところって、芸術的なSFならではのアートが差し込まれているところです。瞬くたびに色が変わる蝶がピカードさんの指にとまり、そして、窓をすり抜けて飛んでいきます。
瞳孔認識でピカードの部屋に入出するソージ。
「人間が人工知能が生きるかどうかを決めています。私たちには選択肢がない。だからこれ以外の選択肢はない。」と、合成生命体を異次元から呼び出す決意を固めている様子。
「あなたに選択肢がないというのは、想像力の欠如です。ロミュランの信仰に促されて、自分をモンスターに変えるのはやめて欲しい。呼び出そうとしている人口生命体はあなた方にとっての救済になるのかもしれないけれど、同時に私たちの滅亡につながるのだから。」っと説得するピカードさん。
両方を生かす道があると信じているピカードさんですが、実際に「合成生命体」の命は絶滅させられてきたわけですから、信じられなくてもしょうがないですね。
世界を救うナレク
姉の秘密基地からグレネードを大量に持ち出そうとしているナレクに「私たちの両親、それ以外の多くの人たちがこのために命を落としたのよ。」と諭そうとする姉。
「家族の汚点で、ジャッド・バッシュから洗い流された存在である僕がSeb-Shenebを探し当てたんだ」と、自分にはできるという主張をするナレク。
「じゃ、好きにしなさい」っとツンデレを見せる姉ですが、最後に互いに目を合わせ、うなずきあいます。ん?、このためは、最後のシーンか???
前回サーガにもらった「想像力」を問われるツールで船を直すリオスとラフィ。実際に直る様子を想像すると、青い光が出て、みるみる壊れた部分が治ります。すげー。
このツール、後に何かの役に立つのかな?
そこに石を投げつけて、リオスとラフィの気をひくナレク。グレネード持っているのに、石を投げているんだよ。これから起こることを回避して世界を救うために協力することを提案します。
ガンマダン (Ganmadan)
ナレクと協力する事に決めたリオスとラフィ。そこにどこからともなく現れて決め台詞「生きることを選択してほしい」を言いながらナレクに対して剣を抜くエルノア。
「はい、もちろん。めちゃ生きることを選択しています。」と返すナレク。ジャッド・バッシュにしても、スターフリート勢にしても、今作の「皮肉」的な言葉遊びは楽しく書かれていますね。
兎も角も、キャンプファイアーを囲みながら、ロミュランの神話、ガンマダンについて語るナレクとエルノア。
ロミュラン人たちが、合成生命体が有機生命体を滅亡させると信じている背景が分かります。
それが、ロミュランの終末論、ガンマダン(Ganmadan)です。ロミュランの祖先のバルカンがバルカン星に到着するよりも昔からあるとも言われている神話。
2人の悪魔(khalagu)の姉妹が、チャハラグー(Ch’khalagu)といわれる最悪の悪魔を解放する物語で、姉妹の一人は、Seb-Natanと呼ばれる予見者で、子供の皮膚で出来たドラムを骸骨で出来た鎖で必死に打ち鳴らし続けて死んでしまった。もう一人は、Seb-Chenebと呼ばれる破壊者で、偉大な地獄の獣の角笛ガンマダンをならし、空間に裂け目を作り、開闢の時からずっと待ち構えていたすべてのチャハラグーを呼び込み、世界は週末を迎える。
ナレクはこの神話を神託として信じているわけではないけれども、その歴史は信じていて、更に歴史は繰り返すと考えており、セブ・シェネブであるソージが大悪魔を呼ぶのを止めようとしているんですね。
そして、一行は、ソージのいる基地へ向かいます。
それにしても、エルノアの精神年齢、やばい。冒頭にも書いたように、「絶対的な率直さ」を掲げているにしても、やばい。
ナレクとエルノアの年齢設定がどうなっているのか分かりませんが、落ちこぼれでひねくれてはいるけれども科学的知見も、歴史的知見も、戦略・作戦の企画力も、ナレクの方が上で、更にソージ愛と使命感があるナレクには「深み」があるのに、同じ「ワカモノ」枠にいながら対照的に「I don’t like you.」(=お前のことは嫌いだ)としか言えないエルノア。痛すぎる。
どうせならもっと実年齢が子供の役者さんにすればよかったのに…
ジャッドバッシュ vs クワットミラット、全く勝負にならないままジャッドバッシュの圧勝ですな。
スパイ、ジュラーティー
ソージが瞳孔認証でピカードさんが隔離されている部屋に入室しているのを見て、アルカナの死体から目を取り出してピカードさんを解放、救出に向かうアグネス・ジュラーティー博士。
上手いこと言ってソーン博士を部屋から追い出してました。
自分でも、「私って最悪のスパイだと思っていたんだけど、意外と才能あるかも」なんて言っていました。
入れ違いで残りのメンバーがピカードたちを助けに行って空になったシレナ号についた2人。技術では有機生命体の先を行く人口生命体をどう止めるのか?
ピカードさんは、自分たちが模範になって彼らに「どう生きるか」を教えると言い出して、使い方がわからないシエラ号を起動します。
アグネスは、「make it so.」とピカードさんがエンタプライズ号のキャプテンだった頃の決まり文句で、賛成します。
運転がたどたどしくて危うい感じながらもロミュラン軍と対峙するために宇宙へGo!
ナレクに耳を貸さないソージ
リモス、ラフィ、ナレク、エルノアの不思議なチームは、アルカナ殺害の真実を知ったソーン博士と協力して、スートラを停止しますが、ソージは説得されません。
ナレクの叫びが虚しく響きます。
悲しみの女王、アニカ
セブンは、ボーグ武器を起動しようとするナレク姉を発見し、バトルの後、ヒューの復讐として高所から突き落として殺害します。
「Sad Queen, Anika」って言われてました。そういえばセブンはSeven of Nineという職責名を短縮したあだ名で、本名はアニカ。暫定的にボーグクイーンになっている時にナレク姉の指示で、起き抜けのボーグたちが大量虐殺されていましたね。
ナレク姉は、かなり印象的で深みのある敵キャラで、頑張ればDS9のガル・デュカットレベルの強烈な存在感を示せそうな雰囲気。死なないで欲しいのですが、「ヒュー殺害」や「ボーグ大量虐殺」は許せないんですよね…
なんでヒューは死ななければならなかったのか…
ヒューの死も、ナレク姉の死も、やるせない。ライター達のキャラの使い捨てが許せませんな。
敵も魅力的じゃないとつまんないとされる最近のSFドラマにおいて、失ったものは大きいカモ。
次のシリーズでは、ナレクがピカード邸のおじちゃんやおばちゃんと共にタルシアーを率いてたりして。
宇宙対戦、一触即発
宇宙に出たピカードさんとアグネス。1:218では分が悪い。
ここでサーガから貰った「想像力」が問われるツールでシエラ号を増殖して見せるアグネス。騙されて標的をコぺリウス基地からシエラ号軍へ変えてしまうコモドール・オー。
なんというか、このシーンなくても全然OKなんですが、サーガから貰った人口生命体の技術がほんのちょっとでも時間稼ぎになったというのは、なんだか嬉しい。
でも無理しちゃって、体調が急速に悪くなるピカードさん。
そうこうしている内にソージはビーコンを完成させてしまい、ロミュランは狙いをコぺリウス基地に戻します。
窮地かと思いきや、ウィルライカー復帰して、スターフリート登場!
内装デザインは、ちょっとディスカバリー風?でおしゃれでした。
コぺリウス星を背にしたウィルのフェデレーションの艦隊とコモドール・オーのロミュラン艦隊が対峙している様子は壮観。
前エピソードのピカードさんの通信が届いていたおかげで、ロミュランよりも先にこの惑星ついてスターフリートの保護下に置くことができて良かったです。
コモドール・オーの階級が何なのか気になっていたのですが、ウィルが「コモドール?、ジェネラル?、自分のことをなんて呼んでいるか知らないけど、もう終わりだよ」って言っているのを聞いて、やはりスターフリートの階級ではないことが分かりました。
日本語でスタートレックを見たことがないからどんな感じで訳されているのか知りませんが、スターフリートではエンセン → ルテネント → コマンダー → キャプテン → アドミラルというように昇進していくのですが、コモドールはなんなのかよくわからなかったんですよね。
バルカン的にはコモドール、ロミュラン的にはジェネラルで、アドミラルと同じレベルなのかな??
ソージの説得成功!
一触即発のスターフリートとロミュランの間で、ソージを最終説得します。選択肢はソージにあることをわからせ、お互いに助け合おうという呼びかけについに従ってビーコンを止めたソージ。
作った裂け目から出てこようとしていたのは、気持ちの悪い宇宙ダイオウイカ的な生命体の足でした。
ビーコンが消されたのを見て、攻撃を止めることにしたコモドール・オー。ウィルのエスコートを断って、立ち去ります。
「いつも後ろを守ってくれてありがとう」とお礼をいうピカードさんに、「最高の人から学んだからね」っと言って、引き揚げます。
ピカードの死
ピカードの異変を知ってコぺリウス基地にビームダウンするソージ。ピカードさんは「破壊者にならないという選択肢は、ずっとあなたの元にあったんだよ。」っとソージに優しく語りかけます。エルノアの名前を呼び、ラフィに「あなたは正しかったね」っと言って、息を引き取ります。
いや、最後の一言がそれはない。
と思ったら、蝶に促されて、セブン&リオス、エルノア&ラフィが悲しむシーンに切り替わり、「えー!!」って感じ。
データの部屋で
死後のピカードさんは、データの「Massively complex」量子シミュレーションにて目を覚まします。SFの割に「めっちゃ複雑な」という形容詞はちょっと寂しいカモ。いいけど。
2人はデータの死について話します。ピカードがソージの為に命を落としたことを後悔していないように、データもピカードの為に命を落としたことを後悔していないことが語られます。
ピカードの為に自己犠牲を払ったことが、「もっともデータっぽい」ことだという表現は、非常に印象的です。自己犠牲というのは高次の精神活動のように思えますが、それが人口生命体であるデータらしいというのは、データがずっと自分は持っていないと思っていた有機生命体の「心」を持っていたことの証明の様ですね。
データのシミュレーションは、ブルース・マドックス博士が救済したニューロンから再生された記憶とJr.ソーン博士が再生した意識から成り立っているという事でした。
そういえば、データには、生みの父の「Sr.ソーン博士」と兄の「ローア」と「母」っぽいアンドロイドがいた気がしますが、弟ははじめて聞いたんですよね。いつの間に?って感じです。
この後、ピカードさんはずっと気にしていた「データに愛しているよと伝えていなかった件」もデータに助けられて、その言葉を口にすることなく、気持ちを伝えることに成功します。個人的にはラフィに言った時のように、本人の口から言って欲しかったな。
そして、データはシミュレーション内の永遠の命ではなく、ちゃんとした死を望みます。
そして目を覚ますピカードさん。一回死んで、記憶をゴーレムに転送して目を覚ました後の最初の言葉は「Am I real?」(私は本物?)。
それに自信を持って「Of course, you are.」(もちろんよ)と答えるソージ。彼女が覚醒した後、かなりの間、自分が本物の人口生命体でないことに苦しんでいたソージが言うと説得力があります。
超能力もなければ、見た目も同じで、脳の病気以外は大体同じ寿命を与えられた新品の体。って、それ、人口生命体だけじゃなく有機生命体も「不死」になった事になりますね。
今は、ピカードさんだけですが、これからこの技術が汎用化したら、人は死ななくなりますからね。
スゴイところに踏み込みましたね。スタートレック。
NetflixのAltered Carbonのスリーブみたいに記憶装置がある間は死なない人類の誕生ですね。
データとの約束を守る
次のシーンでは対照的に元々「不死」だった人口生命体の「死」が描かれます。
データとの約束を守ったとはいえ、これはデータを殺していることになるのですが、「尊厳死」みたいなものでしょうか?
クリフハンガーなしのエンディング
最後は、新たな旅立ちです。
リオスとアグネスカップル、ラフィとセブンの新カップル?、そしてエルノア。最後に人口生命体の禁止令が解かれてどこへでも旅立つことができるようになったソージがシエラ号に揃い、ピカードさんの決め文句「Engage」と共に出発です。
すばらしい!
最近は、最終話に変なシーンを映し出して次のシリーズへの「釣り」を仕掛けて終わる感じ悪いエンディングが多いのに、「ピカード」はスッキリサッパリ終わりました。
気持ちいい!
敢えて言うなら、そこそこ丁寧に描かれていたナレクが出てこないまま終わったことぐらいですが、ハッピーエンディングだし、OKです。
最後に
シリーズを通して、残虐、残酷、非道な描写が多かったし、お年寄りにヒドイ言葉を吐きつける性格のキツイ女性ばかりが出てきてガッカリした部分もありましたが、最後がスッキリ終わったことで、帳消しになりました。
水戸黄門的なきれいごとだけでいいと思うんです。スタートレックは。
そういう作品が少なくなってきましたから、逆に貴重だと思うんです。
だから、このままでいて欲しいです。
キモグロ残虐が見たければ「The expanse」や「Altered Carbon」をはじめとして、ゴロゴロあるんですから。
今風に変えすぎてファンがどこにいるのかわからない「Star Trek: Discovery」と同じディレクターだったので、おそるおそる見ていましたが、ライター陣が違うとこんなにも違うものかと驚きます。
元々は一話完結型だったスタートレックが1シーズンのシリーズストーリー型に変わった事が批判されていましたが、「Discovery」のキャラクター描写、スタートレック正史の完全無視、ひどすぎるストーリー構成が悪かったことで、そう思われただけなのかも。
今回のライター陣はちゃんとストーリーに従って登場人物の深掘りや時代背景の描写を加えてくれたので、シリーズストーリーもいいね!って感じになりました。
SFである以上、ツッコミどころが残っていた方が面白いと思うし、細かいところは笑って流し、今はハッピーエンディングの余韻に浸ることにします。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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